2009/9/5
ごめんね
10-6
翌朝、目を覚ますと、やっぱり僕は一人だった。疲れたせいか、一人だけ寝坊をしてしまった。
ごはんを食べに下に降りると、兄弟たちはずいぶん前に遊びに出ていた。僕はちょっとぼーっとしながらご飯をたべた。お母さんが昨日のことをあれこれ聞いてきたけど、ちゃんと話す気にはなれなかった。
「ちょっと出てきていい?」
「遅くなっちゃだめだよ」
おばあちゃんとお母さんが声をそろえた。
「うん。すぐに帰るから」
おばあちゃん家をでると、僕はまず、駅に向かって歩きはじめた。夕べ、帰ってきた道を探そうと思ったのだ。でも、あんなに長い板塀も、街灯もなかった。なんとなく、そんな気はしていた。
しばらくうろついたあと、今度は城山に戻って、いつもの逆の道を通って登ってみた。やっぱり山沿いに回り込むような道はなかった。ふと気づいて、僕は田んぼの方に出て、自分が歩いたはず場所を外からながめてみた。すると、草むらが切れて、岩肌がむき出しになっている場所があることに気づいた。
近づいてみると、ずいぶんと上の方に丸い穴があいていた。奥には、小さなほこらがまつってあった。
ふと、しょうたがくれた青い花を思い出した。オモイカネ。ポケットに手を入れて、そうっと取り出した。花びらはしおれてしまっているけれど、実の方はしっかりしている。
僕は、左の手のひらに実のせて、そうっと右手を重ねた。両手を合わせたまま、胸の前でまっすぐ立てた。目をつむってみた。静かだった。
少し力を入れると、実はかんたんにつぶれた。そのとき、胸のあたりでしょうたの声が響いた。
「ごめんね……」
ちょっと、シロクマになったときの感じに似ていた。そして、昨日のことが全部よみがえってきた。ちぐはぐになっていた自分の中のなにかが、かちゃんとはまったような気がした。僕は、自分の中に向かってこたえていた。
「いいよ。僕もおもしろかったし」
(ひとまず、おしまい)