2009/9/5
板塀
10-4
その駅では、僕以外はだれも降りなかった。
近くに山がせまった、なんだかぽつんとした、寂しげな場所だった。山が近いせいか、よけいに暗く感じる。
道はちょっとくねっていたけど、街灯の明かりは遠くからでも見えた。
街灯、街灯……。僕はよけいなことを考えずに、ひたすら明かりを目指した。
しばらく歩くと、左の山側の道沿いに板塀が続いているのに気づいた。右側には、小さな小川が流れている。
街灯が見えてきた。そこは、ちょっとした門のようになっていた。
道を囲むように、右側にも板塀が伸びている。塀の間をつなぐように、木が渡してあって、そこから電球がぶらさがっていた。ちゃんとかさがついている。
足下にも太い木が渡してあった。
僕は草を持ったまま、右手を塀にかけて、足を引っかけないように注意して、木をまたいだ。
すぐにそこが、どこだかわかった。おばあちゃんの家にいくときに通る、駅からしばらく歩いたところだ。
まだ、空には明るさが残っていた。
僕は急いで、おばあちゃんの家に向かってかけだした。
しばらく走ると、さすがに息が切れてきた。ふと、後ろをふりかえって、自分がでてきた場所をさがしたのに、なんだかよくわからなかった。まぁいい。早く帰ろう。
僕は走ったり歩いたりを繰り返して、いそいでおばあちゃんの家に戻った。
「ただいま!」
僕が戻ると、家の中はちょっとした大騒ぎになっていた。お父さんとお母さんもいた。みんなで僕を捜していたのだ。
「よかった、よかった」
おばあちゃんやおじいちゃんはとっても喜んでくれたけど、お父さんとお母さんには
「こんな時間まで一人でどこにいたの!」
と、こっぴどくしかられてしまった。
「まぁまぁいいじゃないの、帰ってきたんだから。さぁご飯の用意しましょ」
「そうだぁ。腹減ったぁ!」
兄貴が大きな声を出した。弟たちも来ていた。
「そうそう。ご飯、ご飯」
おじいちゃんもそう言いながら、お酒の入った瓶を持ってきた。
「まぁいいか。これからはもうちょっと早く帰ってこいよ。警察に電話しちゃいそうだったんだからな」
お父さんがあきらめたように言った。
僕はその間、ずーっと黙っていた。なぜか、言葉が出なかったのだ。