2009/9/5
右、右、街灯
10-2
池を離れて少し歩くと、一本の線路が走っていた。
「さ、こっちだよ」
僕はわけもわからず、線路沿いの道を歩いた。ぽつぽつと街灯がついている。そういえば、かなり暗くなってきた。僕はちょっと、心細くなった。
しばらく行くと、小さな駅があった。駅といっても、ただちょっとした土手が作ってあるだけで、あとはなにもない。驚いたのは、駅の名前もないことだ。
土手の上に立つと、女の人がしゃがみこんで、僕に話しかけた。
「すぐに、電車が来るからね。そしたら二つ目の駅で降りて、右側の扉から降りてね。降りたら、電車が走っていく方の道に出て、一つ目の角を右に曲がってね。そのまま真っ直ぐいくと街灯があるから、そこまで行けば帰り道はわかるはずだよ」
僕が、女の人が言った順番を頭の中で思い返していると
「覚えておいてね。右の扉、右に曲がる。そして街灯。右、右、街灯。ね」
とまた言った。なんだか話し方が、学校の先生みたいだ。
「右、右、街灯ですね」
「そうそう」
女の人は、やさしそうな顔でにっこり笑った。
しばらくすると、赤い電車がやってきた。2両しかない。
ガラっと扉が開いて、何人か降りてきた。中には、一輪車やクワを持ってる人もいる。
電車の中は木でできていた。今なら、博物館でしか見られないようなやつだ。
僕が乗ると、女の人もついてきて、車掌さんを呼んで、切符を買ってくれた。
「二つ目で、右の扉ね」
すこし、僕のことを話した後、もう一度、今度は僕と車掌さんにそういうと、外に出た。
ゴトン、と音がして、電車が走りはじめた。