2009/9/5
べんてん池
9-5
水鏡は、しずかに僕たちをふもとまで連れて行ってくれた。
だんだんと低くなってきて、木々のてっぺんが近づいてきたときは、ちょっとドキドキした。でも、それ以上は下がりきらないで、まるでレールの上に乗っかっているように、すうーっと動いていく。
すぐ近くを鳥が飛んでいた。虫も飛んでいた。
途中、大きな木にぶつかりそうになったときは、その手前に透明な壁があるような感じで、すうっとよけた。
だんだんと木立がまばらになって、とうとう田んぼの上にでた。
人間がいる場所だ! そう思ったら、とってもうれしくなった。
僕たちを乗せた水鏡が、遠くの森に大きな影を落としている。青い稲穂の間には、まだたっぷりの水があって、そこに自分たちが映っているのが見える。
そして、あちこちに家が見え始めた。人がいる!
何人かの人が、僕たちに気づいたようだ。なにか大きな声を出している。
「あー、見つかっちゃったか~」
しょうたが困ったように言った。
「見つかっちゃいけないの?」
「まぁ、いいよ……」
そう言って、鏡を両手で包み込むようにした。
「ほら、あそこ。あの池につくんだよ」
言われた方を見ると、田んぼのまん中に、こんもりと木が生えた丘が見えた。そのわきに、ちょっとした池があった。まだ明るさを残した空を映して光っている。
見ると、周りに何人かの人がいて、何か長いものを振り回している。
「あれ、なにしてるの?」
「行けばわかるよ」
僕たちは、家の屋根の上を飛び越え、田畑の上を通って、とうとう池の近くまでやってきた。二十人くらいの人が集まっている。大人もいれば、子どももいる。男の人も、女の人もいる。そして、何人かの大人が、長い竹ざおを持っていた。
池の手前には鳥居があって、向こう側にはほこらがあった。池に近づくと、水鏡はゆっくりとスピードと高さを落として、みごとに鳥居をくぐった。
その向こうには、たくさんの竹ざおが並んでいた。