2009/9/5
おしっこ
9-4
「ほらこれ」
しょうたが近づいてきて、鏡を見せてくれた。確かに、あの山がきざみこまれていた。
ほっとしたせいか、なんだかおしっこがしたくなってしまった。
どうしよう……。こんなところでおしっこをしたら、水鏡がおしっこだらけになってしまう。
「おしっこが……」
と言いたくても、言葉にならない。僕はみぶりでおしっこをするマネをした。
「ははは。おしっこなら、しちゃって大丈夫だ。すみのほうでやれよ」
僕は、できるだけすみっこに近づいて、外に向かっておしっこをした。すると、おしっこは水鏡の中で丸い玉になってまとまってしまった。
「はぁ~」
と、ため息をついた瞬間、なんだか楽に声が出ていることに気づいた。ふと手を見ると、人間の手になっていた。
「あれ? 僕、戻ってる?」
「戻ってるよ。たぶん、おしっこをしたせいだな。あれでかば山の水が出たんだ」
「そうなの?」
「たぶんそうだ。それより、おしっこは外に出しとけよ」
「どうやって?」
「そうっと押し出せばいいんだよ」
いわれて、そうっと手を近づけると、ゆっくりとおしっこの玉が動いた。そのまま押していくと、水の入った風船がはじけるように、パチャンとくずれて外に出てしまった。
「な。これ、普通の水じゃないんだ」
「汚れないんだね」
「うん。不思議なんだ」
「ところで、これ、どこにつくの?」
「べんてん池だよ」
「べんてん池?」
「そう。もうすぐだから。そうそう、そのときも水は飲むなよ。シロクマになっちゃうからな」